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矯正治療Q&A

Q.矯正治療のメリットを教えて下さい

Ans.歯列矯正を希望する方の中で最も多い理由は「見た目をきれいに、かっこよくしたい」というものです。

しかし、噛み合わせが悪いということは外見だけの問題ではないのです。それは、体全体の健康にとても多大な影響を与えているのです。

考えられる噛み合わせ不良のデメリットをあげてみます。矯正治療によってこれらが解消されます。

1.顎がズレることによって、、顎関節症を起こしやすい

噛み合わせが悪いために、口が開けにくい、顎の関節に音がする、口を開けた時に、顎の関節の回りの筋肉が痛むなどの障害の原因になっています。

2.全身への悪影響が起こりやすい

顎のズレによって、噛む時に一部の筋肉に過度の負担がかかることで、肩こり、偏頭痛、首のこり、耳鳴り、眠りが浅い、ひどい生理痛、生理不順、腰痛など、全身へのさまざまな弊害が現れてきます。

3.咀しゃく障害が起こりやすい

食べ物を十分に噛み砕くことができないために栄養摂取の効率が悪くなり、唾液の効用も十分に利用できなくなり、胃腸を壊したり、消化器系への障害を引き起こしやすくなってきます。

4.劣等感を抱きやすい

歯並びが悪いことにより、大きく口を開けて笑ったり、しゃべったりすることにひけ目を感じて、性格的にも暗くなりがちです。外国人は、なぜ日本人は手を口に当ててしゃべったり笑ったりするのかと、とても不思議がります。近年は、芸能人などの影響もあって、欧米並みに歯への関心が高まっているので、深刻に歯並びの悪さを悩んで、コンプレックスになっている人は増えています。

5.発音が正しくできない

奥歯を噛みしめても、前歯が開いてしまう「開咬」の場合は「サシスセソ」などの、摩擦音が出しにくく、英語の発音には特に大きなハンディーとなります。また、「受け口」の人の発音は、大きく口が開かないために、正常な歯並びの人とは違った独特の発音になってしまいます。

6.顎の成長に異常をきたす

顎の成長が十分に進まなかったり、逆に異常に進みすぎて、顎が未発達になったり、顎がシャクれたり、顔が非対称になったりします。

7.虫歯や歯周病になりやすい

歯並びが悪いと歯の周りに汚れがたまりやすく、又歯ブラシも届きにくくなります。細菌による歯や歯肉への汚れは、虫歯や歯周病の原因となるのです。

Q.悪い歯並びにはどんなタイプがありますか?

Ans.一口に歯並びが悪いといっても、外見上悪いタイプと、一見きれいに見えるのに、噛み合せ的に悪いタイプがありますが、ここでは、外見的で判断できるタイプを列挙していきましょう。

1.出っ歯(上顎前突)

明石家さんまや久本雅美さんなどがこのタイプで、上の前歯が下の前歯より大きく前に出ている歯並びのことです。

2.受け口(下顎前突)

巨人の松井選手、アントニオ猪木さん、ヤクルトの石井選手などがこのタイプで、下の前歯が上の前歯より前に出ている歯並びです。顎がしゃくれているように見える人はこのタイプです。このタイプの人のしゃべり方は独特で、あまり口を開けずにしゃべるので、私には声を聞いただけで受け口だとわかってしまいます。

3.乱ぐい歯(叢生)

歯がデコボコしていて、八重歯などになったりしている歯並びで、矯正治療を受けに来院されるタイプでは最も多いのがこのタイプの患者様です。

4.オープンバイト(開咬)

奥歯で噛んでも前歯が閉じないで、隙間のある噛み合わせのことです。このタイプの人は、発音時に息がもれるため、「サ行」などに発音障害が生じます。

5.顎偏位

下額が左右にズレることにより、上下の歯の中心がズレて合わなくてなってきます。これは、下額が左右のズレた位置で奥歯が噛み合っているために生じます。このタイプの人は、片方でしか噛めないとか、片方だけ頭痛や肩こりが激しいということがよく生じます。

6.ディープバイト(低位咬合)

奥歯で噛んだ時に、下の前歯が上の前歯によって半分近く隠れてしまうような噛み合わせのことです。下の歯が完全に隠れている人もいて、下の歯の隠れ方が多い人ほど問題があります。


これらの分類は、読者に分かりやすくするために便宜的に分けていますが、実際にはこれらのいくつかが重複していたりすることが多く、また、外見上はほとんど問題ないのに、よく調べてみると、噛み合わせに問題があることもよくあるのです。

そのため、ある歯科医院では「きれいな歯並びですね」と言われたのに、他の歯科医院では「噛み合わせに問題がありますね」と言われることが生じるのです。

 外見上でのみ判断してしまう歯科医院も多く、機能的な面での診断を下せる訓練を受けていないので、正しい噛み合わせと見た目の歯並びを混同してしまう結果を招いてしますのだと思います。

Q.矯正治療は痛いですか?

Ans.矯正のワイヤーを通じて歯に力を加えれば、歯と顎の骨の間にある、クッションの動きをする歯根膜を圧迫することにより、歯根膜炎という炎症状態になり、痛みが生じます。

この痛みには個人差があるので「すごく痛い」と感じる人もいれば、「軽い違和感程度」と感じる人もいます。闘値といって、痛みを感じる値には個人差があるのと、歯の初めの状態はそれぞれ違うので、人によって感じ方が違ってくるのです。

一般的には、治療した日から二、三日は、違和感や痛みがある方が多く、それ以後次の治療までの間は普通に生活できます。

一番大変なのは、初めて矯正装置をつけてから一週間は、何を食べてもと言いますか、互いの歯が触れただけで、石を噛んだ時のように感じてしまうことです。

正常な時は、噛む方向にだけ力が加わっていたのが、矯正装置をつけて歯に力を加えることによって噛む方向以外にも力が加わるために、歯が触れただけで痛くなるのです。

これは、新しい方向に力をかける時、それまでゼロだった力が一に変わるときに感じることですが、一から二や三になる時には、初めのように痛みを感じることはありません。何事も初めの一歩が一番大変なのです。

終わりが近づくにつれて、歯を動かす量も減ってくるために痛みや違和感もほとんどなくなってきます。

痛いといっても歯と歯が触れたときだけですし、歯を抜いたり、歯の神経をとる時のような持続的な痛みではないですから、必要以上の心配はいりません。

Q.矯正器具の名前と使い方を説明して下さい

普通、矯正治療というものはブラケットというメタルか、セラミックの物を歯の表面につけます。

見た目を目立たないようにしたい場合には、セラミックブラケットが優れていますし、欠けたり、取れたりしたくない場合にはメタルブラケットが優れていますが、機能的にはそんなに違いはありません。後は費用的にメタルブラケットの方が治療代が安くなります。

しかし、このブラケットだけでは歯を動かすことはできません。このブラケットの中心の溝(スロットと呼ぶ)にワイヤーを通すことによって初めてワイヤーの力で歯が動いていくのです。

メタルブラケット写真   セラミックブラケット写真
メタルブラケット   セラミックブラケット

このワイヤーにも丸いワイヤー、四角いワイヤー、直線状のワイヤー、屈曲されたワイヤーなど、いくつかの種類のものがあります。これは歯をどう動かしたいかによって使用するワイヤーが違ってきます。

丸いストレートワイヤー写真   屈曲されたワイヤー写真
丸いストレートワイヤー   屈曲されたワイヤー

後、補助的な道具として歯を3次元的に動かす為に上下のワイヤーにゴムを引っ掛けて動かすことがあります。顎間ゴムと呼ばれ下の顎の動きにも作用することになります。

顎間ゴム写真    
顎間ゴム    

ワイヤー(主線)

ワイヤーには、初期頃(○日~三ヶ月目)に装着する物で、形状記憶合金のものを含め、切断するとその形が丸いラウンドワイヤーと、後半期に使用し、矯正治療のメインになる切断面が長方形のレクタングルワイヤーがあります。ラウンドワイヤーの働きとしては、前後、左右へ平面的に歯を動かす働きをします。このワイヤーだけで、ぱっと見の歯並びは結構きれいになるものなのです。

レクタングルワイヤーでは、三次元的に、上下も含めて立体的に歯を動かしていきます。平面的に見た目がきれいになっても、上下の噛み合わせが一致していなかったり、顎のまわりの筋肉の運動と合っていなければ、歯はただの飾り物になってしまうので、このレクタングルワイヤーが矯正治療の主役なのです。

ブラケット

なぜかわかりませんが、患者様はこの装置のことをブリッジと間違えて呼ぶ人が多いです。ブラケットの真ん中には、ワイヤーより少しだけ大きいスペースの溝があります。ここにワイヤーを入れて歯を動かしていくのです。

ブラケットの溝がワイヤーより少しだけ大きいのは、多少の遊びがないと歯が思ったより極端に動きすぎてしまったり、それに伴って多くの痛みを発する原因になったりして、治療にいろいろ問題が出てくるためです。

ブラケットの種類には、金属の物、セラミック製の物、レジン製の物などがあります。外見の問題を除けば、金属製のブラケットが、強度、接着力、ワイヤーとの摩擦関係など、全てにおいて優れています。

バンドのブラケット

矯正治療を始める前に金属やセラミックの被せ歯が入っている歯や、一番奥の歯で、ブラケットが外れたら困る箇所にバンドのブラケットを装着します。

バンドの場合、まず外れることがないので、以前は全ての歯にバンドのブラケットをつけて治療をしていた時代がありましたが、歯に使う接着剤の飛躍的な進歩によって、今はなるべくバンドのブラケットを使うことは避けられ、限られた歯にだけ使用し、極力普通のブラケットを使って矯正治療をするようになっています。

Q.矯正治療の期間は歯科医院によって違うのですか?

Ans.以前、某有名女流作家が矯正治療をして、テレビでそのことについて話をしていましたが、二、三年で治療が終わると言われたのに、結局五年も治療にかかってしまったとグチっていました。

当クリニックでも、三年後に留学を考えていて、治療期間は二、三年と言われたのに三年経っても全然終わりそうもなく、担当の先生にいつ終わるのかを聞いても、まだ分からない、と言われ留学に間に合わないので、今からこちらで治療してもらえないかという患者様が来院されたことがありました。

矯正治療は、一般的に、二、三年の治療期間だと言われていますが、実際には五年も七年も治療が続いたという話や、今まで一番長かった人の話では、10年も矯正装置をつけていたという人がいました。

私のクリニックでは、ほとんどの患者様の治療が一年ぐらいで終了しているので、五年も七年も患者様がよく我慢してくれるなと感心してしまいます。

治療期間に差がでる要因としては、治療方法が違うことと、患者様がこちらの指示通りに治療に協力してくれない場合のことがあります。

治療期間が短いということは、患者様からするととても望ましいことですが、治療期間は短いけれど治療結果は不十分、では何の意味もありません。

患者様は、前歯の見た目は自分で理解できますが、正しい噛み合わせに関しては理解できないので、前歯だけきれいにされて、早く治療を終了されたら悲惨です。

ですから、治療期間が短いということがいい治療であるということではないので、十分に気をつけて下さい。

正しい噛み合わせになっているかどうかの目安として、体調の変化を考えてみるのが一番分かりやすいと思います。

治療の終了時に、治療前よりいろいろな不快症状が良くなっている場合は、その噛み合わせが体に正しく適応して機能していると思っていいでしょう。

Q.矯正治療の根底にある考え方

Ans.私の物の考え方の基本として、人間の考えることはどんなにがんばっても、自然や神様の摂理に比べれば、本当に無力であると思っています。

人間が自然を支配したとか、医学によってたいていの病気は解決できるようになったとか考えていると、後で大きなしっぺ返しを食らうことになると思っています。

矯正治療において、私の行っている歯を抜かないで治療する方法は、私が新しい噛み合わせ歯並びを治しているというよりは、その患者様の歯がきちんと生えていればこう並んでいたという位置に並び替えているだけなのです。

一方、歯を抜いて歯並びを変える場合には、本来歯が生える位置に歯を並び替えるというよりは、歯医者の考えで新しい位置に歯を並べ、新しい噛み合わせを作り出すということなのです。

矯正治療が、美容整形と大きく違うことろは、見た目をきれいにするというだけではなく、下あごは食事をしたり、しゃべったりする機能を伴うということなのです。

見た目だけきれいにするのであれば、新しく作った噛み合わせでもなんら問題はありませんが、機能的に問題がある噛み合わせだと、見た目はいくらきれいでも何かしっくりこなかったりするものなのです。

矯正治療が見た目の回復だけでなく、噛み合わせというとても大切な機能を回復する治療であるだけに、やはりより生理的に自然に近い形で治療していくことが望まれるのです。